Q太郎の『いぎなり怒らった』

~しみわたる一杯の水~

「うそつきは泥棒のはじまり、怒りん棒は〇〇のはじまり」

これは、ある4才児(ダイちゃん)と父親とのある日のやりとりである・・・

(父親=私)

 

それは保育園がお休みの日の朝

親子が仲良く遊んでいる
すると4才児がそれまでの話の脈絡(みゃくらく)に関係なく、急に次のような話をはじめた

「・・・お父さん、あんまり怒ってると、オニのはじまりだよ?!」
男の子は急に語気をつよめた
「(・・・オニ?)」
お父さんは少し考えてからきいた
「お父さんが?ダイちゃんじゃなくて?」
「そうだよ」
ダイちゃんはひとを諭(さと)すように言った

それでお父さんはきいた
「あんまり怒るとそのうちオニになっちゃうってこと?」
すると目じりをつりあげて興奮し始め、ダイちゃんが話しはじめた
「そうだよ、あのねえ、オニになってねえ、桃太郎が(オニを)やっつけるんだよ!」
お父さんはだまって

「はーい、すみません」

と謝った
お父さんには身におぼえがあった

 


お父さんはふだんはいいお父さんである

仕事から帰ってきても、休みの日も、子どもたちのよき遊び相手である

しかし

なにか心配事や職場でのストレスがかさなるととたんに変わってしまう
そんなときはちょっとしたことにもイライラしやすく怒りんぼうに変わってしまっていた


(・・・たしかに怒りに我を忘れた姿は、オニのそれとなんの違いがあるだろうか)
(怒りに支配されて人間が狂気にはしる様子はオニのしわざと寸分たがわない・・・)


そんな思いが浮かんでは、子どもに言い返す言葉もない

 

ダイちゃんの表情は、にわかに怪談ばなしをする噺家(はなしか)のようになっていた
「そしてねえ、くらぁいところに連れていかれてねぇ、・・・帰ってこれなくなっちゃうんだよぉ…?いいのぉ?」


そこでお父さんはふと、なにかいぶかしく感じたのでたずねてみた

「ダイちゃん、それダレにきいたの?せんせい?」

すると

「んーん」

とダイちゃんは首を横に振った

「ともだちが言ってた。」

 

(ははぁ・・・)

と、ここでだいたい想像がついた
なにかのときに保育園でともだちにきいた(もしくは言われた)話らしい

しかし考えてみれば、そのお友だちも自分のお母さんかだれかから同じようにきかされたのだろう

とすると、名も知らぬどこかのお母さんかだれかに諭されたことになる

息子も、そして父も、だ

 

 

 

子供が保育園に通っていると、こういうことが時としてある

 

「ハッ」とさせらることをポロリと子供が口にする


よく聞くとそれは保育園の先生が言ったことだったりする
そしてなぜか、ふしぎと納得がいってしまう


会社で言われるより、誰に言われるよりストンときてしまう
そう考えるとほかの家のお母さんや保育園の先生というのは、あんがい影響力があるということもできる

 たえず純粋なこどもと向きあっているから、なのだろうか

こどもはもとがまっさらだから、なまじ理屈をこねたところで納得しない
(その代わりにへんなところでカンタンに納得してしまったりする)

こどもに向かって投げられられることばは、おとなのこころにこそ素直にひびく


しかし、だれが言ったか知らないが

「うそつきは泥棒のはじまり」
とはよく聞くが


怒りん棒はオニのはじまり


とはよく言ったものだとおもう